VOICE / 中村真紀

中村真紀です。私は2020年に東京から糸島に移住してきました。2016年に、ご縁あって糸島と出会い、ひとめぼれして、ほぼ毎月通った後に移住しました。糸島の魅力はたくさんありますが、中でも、「面白い人たち」と「糸島産の素材を使った美味しいお料理を提供する飲食店」が秀逸。これらを使い何かできないかということで、今回のプロジェクト発足の運びとなりました。

私は、ワインが大好き。ワインエキスパートの資格も持っています。糸島の地産地消をモットーとする素敵な飲食店が大好きで、通いまくっていますが、一つだけ残念なのは、そこには糸島産のワインがないことです。

ずいぶん早い時期から、糸島産のワインがあればいいなあと思っていました。また、ワイン好きとしては、絶対に叶いそうにはないなと思いつつも、自らワインづくりに関わるという野望も持っていました。移住にあたり、外資系企業を辞めて起業する計画を立てたものの、「移住先にありき」で事を進めたため、移住当初は、独立して何をするのかまったくの白紙状態。そんな中、無理だとわかっていても、ワイナリー運営も候補の一つとして、小規模なワイナリーを運営するノウハウ本や、実際に運営している人の体験談も買って読みました。しかし、結論は「やっぱり、どう考えても無理！」というものでした。

ところが……です。移住後すぐに、別件でご縁のあったある会社さんが、糸島産ぶどうでワインを作る構想をもっていらっしゃることを知りました。無鉄砲な私は思わず、「私、それにかかわりたいです」と手をあげました。ところが、そのプロジェクトにちょっとかかわっただけで、想像以上に大仕事だと思い知らされました。

どうしてもあきらめきれなかった私は、現副市長、当時は、市役所を退職されて、フリーだった馬場貢さんに「なんとかならないですかねえ？」と相談。そうしたら、馬場さんも「糸島でワインとは面白い！」とすぐにのってくださり、２人が世話人となって、いろいろなメンバーを募って勉強会を立ち上げることになりました。この2021年初頭に始まった勉強会が、一般社団法人「いとしまワインプロジェクト」のベースとなりました。

その後、農家さん、飲食店さん、ソムリエさんなど続々と面白い人が集まってきました。メンバーのネットワークを活用して、先輩生産者さんのところにワインづくりを教えていただきにも行きました。メンバーの中でも、特に私、ただのワイン好きの素人がワインを作るなんて……。そんな甘いもんじゃないよと思われた方もおられたと思いますが、皆さんのおかげでプロジェクトの基盤作りに欠かせない多くの有益な情報を得られたことに心から感謝しています。

その後しばらくは畑もみつかりませんでしたし、今もまだ、誰が醸造するかも決まっていない状態です。企業や個人の事業においては、そのあたり全てを整え、財務計画をシミュレーションして、大丈夫だと確信して始めるというのが普通だと思いますが、それができていない……。

「いとしまワインプロジェクト」では、夢をもって、仲間が集まれば、「なんとかなるっちゃろ」と、考えています。目的は利益を出すことではなく、糸島の地場の素材でつくられた身体によくて美味しい料理に合う「いとしまワイン」を作りたい。そんなお料理を提供している素敵な飲食店で、自信をもって出せるような「いとしまワイン」を目指したい。そして、「いとしまワイン」のことを一人でも多くの人に知ってもらい、それなら、自分もやってみたいと、ワイン作りに興味を持った人が集まってくるような、大きく言えば、皆を導くパイオニアになりたい。それら全てを通じて、糸島の街がますます魅力的になっていくことを望んでいます。

いろいろと生意気な事を述べてしまいましたが、正直なところ、個人的には、自分たちが大好きなワインができるかもしれない、と、ユニークで個性的な仲間たちが集まってわいわいガヤガヤやっていること自体に幸せを感じる。もう、それだけで十分幸せです。

私は、なんなら、万が一ワインができなくてもいい。

こんなことを言ったら、みんな驚いたり、怒ったり（？）するかもしれないけど、今のままでも十分幸せ。もちろん、素敵なワインができたら、本当に、もっともっと幸せになれるのは間違いないけれど。