ワイングラス

VOICE / 田中信彦

皆さんと一緒に汗を流しながら作る楽しさ

田中信彦です。私は地元、糸島の日本酒の蔵元ですが、縁あってこのプロジェクトに参加しました。ブドウを育てるところから始めるのは大変なことだと思いますが、皆さんと一緒に汗を流しながら作る楽しさを感じたいなと思っています。

思い返せば、ブドウやワインとの関わりは、東京農業大の学生時代にさかのぼります。家業の経営が苦しかったため、親の仕送りには頼らず、学費と生活費をすべて自分で稼ぐことにしました。

いろいろなアルバイトを経験しましたが、そのうちの一つが、ブドウ売りの〝流し〟でした。ベリーAやマスカットなどを、山梨の農家からトロ箱ごと買い取り、東京都内の町なかを軽トラに乗って売って回りました。売れ残ったブドウを下宿先に持って帰り、遊び半分でブドウ酒を作ってみたこともありますね。

卒業後は家に帰り、26歳の時に父が脳梗塞で倒れたので、そこから家業を一手に引き受けました。杜氏、蔵人ら周囲の協力があってここまでやってこられたと思います。今は息子3人が役割を分担して支えてくれています。

実は以前、息子たちに「うちでもワインを造ってみてはどうか」と話したことがあります。すると、ブドウ栽培から手掛けるのがどれほど大変か分かっていたからでしょう、私の提案は一蹴されてしまいました。そんな話を、このプロジェクトの発起人、中村さんや馬場さんにしたことがあったのかな。
彼らから「糸島で酒の醸造をしているのは、田中さんのところの白糸(しらいと)酒造1軒だけ。糸島にワイン醸造所があってもいいのではないか。白糸さんが協力してくれると、プロジェクトとしても面白くなる」と言われました。それがきっかけで、個人で参加することになりました。

うちの場合、米は仕入れるので、原料を生産する苦労は農家からお聞きするだけです。このプロジェクトのように、ブドウを作るところからというのは並大抵のことではないと思います。ですが、一人一人がやれることをやって協力しあえば、必ず成就すると思います。

私は常々、米が、香り豊かな飲み物に変わるのは不思議だなあと思っており、その過程に携われるていることは、造り手冥利に尽きます。このワインプロジェクトで、皆さんと一緒にワイワイガヤガヤやりながら、そんな経験ができるのは楽しみですね。

田中信彦

糸島市で唯一の日本酒の造り酒屋「白糸(しらいと)酒造」の7代目。1855(安政2)年創業で、古来からの「ハネ木搾り」を今に受け継いでいます。おかげさまで地元だけでなく、全国各地の日本酒愛好家にご愛飲いただいています。

現在は糸島市観光協会の会長も務め、糸島の魅力を発信し、訪れる方々に満足していただくために知恵を絞っています。このプロジェクトメンバーもそうですが、糸島に移住してこられる方は多いです。私はここで生まれ育ちましたが、当たり前の生活が、よその方から見るとぜいたくなものだということが、彼らと話してみて分かるようになりました。例えば、食べ物は「四里四方」といって、4里以内の物を食べていれば健康長寿でいられる、と聞いて育ちましたが、その範囲で、新鮮な魚、取れ立ての野菜が日々口にできるのです。いつかそこに、日本酒だけでなく、糸島産のワインが加わるのもいいなあと思っています。

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